2025年05月21日(水) 天気:曇のち雨
飯田式露出計というものもあるらしい
1939年に発行された「アマチュア・カメラ」(玄陽社)という雑誌に,「露出計の種類」(飯田順二)という記事があり(*1),そこには7種類の露出計の名称が紹介されている(2025年2月1日の日記を参照)。そこに記載されている7種類のうち,「キング露出計」「アルス露出計」「清水式露出計」「サロン露出計」は,実物を入手したり過去の広告などを同定したりできている。それに対して,「アグファ露出計」「べスターメーター」「ウェルカム露出計」については,実物や広告などを確認できないでいた。それらの名称で国立国会図書館デジタルコレクションを検索しても,それらしき広告などがヒットしてこなかったのである。
ところが,あらためて検索してみたところ,「べスターメーター」の広告があっさりと見つかった。アルスが発行していた雑誌「カメラ」の1939年9月号の,銀鈴光機合資会社というところの広告に「新発売」として掲載されていた(*2)。アルスの「カメラ」は,国立国会図書館デジタルコレクションでもっとも参照しやすいカメラ雑誌だと感じている。まったく,どうしてこれを見落としたのか。
これによると「べスターメーター」は「飯田式簡易露出計」という名称もつけられている。「飯田順二先生考案」「下島勝信先生御推奨」ともある。さて,これらはいったい,誰であろうか。まず気がつくのは,「飯田順二」という名前は,先の「アマチュア・カメラ」誌に「露出計の種類」という記事を書いた人物と同じ名前である。しかも,該当の「アマチュア・カメラ」も
「カメラ」も,どちらも1939年9月号である。「アマチュア・カメラ」の記事をあらためて読んでみると,べスターメーターについて「最近発売された」と書いてあり,時期が整合する。そして,「他のものに比して使用法が甚だ簡単で」などと,さらっと強力なアピールをしている。
「下島勝信」という名前を検索すると,写真家として活動していた背景が見えてくる。それに対して「飯田順二」という名前は,玄陽社の「アマチュア・カメラ」でばかり名前が見つかる。ここを活動の場としていたということで,つまり「露出計の種類」という記事は,露出計全体の解説という体裁を利用した自己の宣伝記事だったということなのだろう。
*1 「アマチユア・カメラ」(玄陽社,1939年9月号) (国立国会図書館デジタルコレクション)
→https://dl.ndl.go.jp/pid/1498449/1/34
*2 「カメラ」(アルス,1939年9月号) (国立国会図書館デジタルコレクション)
→https://dl.ndl.go.jp/pid/1501859/1/29
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